何も入らないから、仲間に入れて
命をあげるから、蛇にして
貴方の事を喰べたせて




自分はまるで蛇のようだと思う瞬間がある。

例えば人の人生をパクリと食べてしまう時。

快感にも似た興奮。

例えばシズちゃんとSEXしてる時。

獰猛な化け物を手懐けつるような幸福。

例えば、自分が結局は独りなんだぁって思っている時。

俺は孤独すら丸飲みしてみせる。


本当に蛇ならよかった。

シズちゃん食べて、シズちゃんと一つになれる。


でもシズちゃんはSEXのあと「手前はハリネズミみたいだ」っていった。

…よく分からなかったから、シカトしたらベッドごと逆様にされた。

「起きてんだろ」って布団も剥がれた。

起きてるけど、この扱いはない。
腰に響くし、俺が願うような甘い空気の一つもない。

願うって言うか妄想。
だって自分でもどうすればいいのか分かんないんだ。

むしろ、シズちゃん相手に無理がありすぎる。

じゃあなんでHしてんのって、…そりゃ…、なんでだろうね。

俺が蛇だからじゃないかな。なんて思ったら自分でも笑えた。

シズちゃんはライオンでしょ?

ライオン手懐けるってさすが俺。

でも分かってるよ。


本当に飼われてんのは俺のほうなんだ。

どんな知恵の実をイヴに与えたって、イヴには勝てないんだ。

アダムに愛されてるイヴには勝てないんだ。


俺はイヴに嫉妬して知恵の実を与える為に蛇に変身した神様ってやつかな。




皮肉だね、寂しくてシズちゃんと一緒にいたのに、シズちゃんの孤独は癒せなかった。

だから池袋に化け物集めたのに、

そんな化け物イヴ達にアダムをあっさり盗られちゃった。


アダムとイヴをエデンから追放したのに、

実際追放されたの俺の方だし…。


シズちゃん、俺いっつも笑ってるけど、

本当は悲しいし

寂しいんだ。




「ハリネズミのジレンマっていうだろ」

馬鹿なシズちゃんがよく知ってたなとか普通に驚いたけど、

頭ぽんぽんされて、抱き上げてくれて、風呂場に連れて行ってくれた。

でも「後は自分でやれ」って風呂場から消えた。

ベッド綺麗にして俺がゆっくり出来るようにしに行くの知ってるよ。

『ハリネズミのジレンマ』っか。

だったらシズちゃんライオンでもアダムでもなくて、俺と同じハリネズミ。


…って思ってもいいよね。今だけは。



   ハリネズミのジレンマ



俺が欲しいものは決して手に入らないものだと思い知らされる言葉だ。



やっぱり、俺は蛇がいいな。


そしたらシズちゃんの何もかもを奪って食い尽くしてやるのに