暗い…


何処かで水の落ちる音がする。

此処は…






… ポチャン




また、誰が俺を呼ぶかのように

ゆっくりと、でも確かな音で水が落ちる音がする。


何処だろう…


何処から聞こえるのだろう。


俺は、


       俺は…

  其処へ行けばいいのか?




 

























ふと、目を覚ますとカーテンから覗くに光に目を焼かれた。
余りの刺激に顔ごと避けると、そこには俺の全てがあった。

俺の憧れ、俺が欲しい物を全てもっている男。
綺麗な顎のライン、頬に縦に走る傷。
その上にある俺と同じ赤い目、…其処まではみれない。
怖くて見れない。
カカシは俺が嫌いだ。だから俺と目が合えば問答無用で苛々するらしい。
何度も殴られて、何度も蹴られて、何度も血を見た。
だから俺が見れるのは顎と首の間辺りだけ、きっと男は俺の旋毛しか見えてない。
そっ、と鼻先に指をかすめる。起きていたの口元が吊り上がった。
「…何?欲しいの?」
冗談めかして笑っていた。
だが、言葉の節々、裏側に本能的なものを匂わせていた。。

欲しい

多分、そういう事…。
俺もまた欲している。
喉がヒリヒリとして、喉が渇く。
その渇きを潤すように男を欲していた。
貰えるのであれば、その全てが欲しい。
本能的にそう思う。
恵まれた身体、大人の身体、俺とは全てが違うその魂。

こんな、こんなちっぽけな入れ物は要らないんだよ…。

「…あぁ…」

なんでも知ってる大人は、本当は何も知らない。
なんで俺がその身体を欲しがるのか、あんたは一生わからない…。
だって俺にも分からない。
ただ喉が渇くんだ。
満たされない事を本能的に知っていながら知らないふりををしてカカシの腕の中に埋もれていく。
多分、否確実に俺の喉が潤った時俺は全てに絶望し、カカシを恨むことになる。
そんな、気がするんだ。

俺の考えなんてお構いなしに、あんたはただ、俺の頭を撫でるだけだ…。

徐に唇が重なって、どんどん角度が深くなる。

「…ぁ…ふ、…ん、」

何故こんなにもあんたが俺を欲しがるのか分からない…。

俺は…決まってる。カカシの熱が欲しい。
ただそれだけだ。


「…あッゃ…ぁ、ん……はぁ…ぁッ」

「…サスケ、…」


無い胸舐め回して何が楽しいのかも分からない…


俺の上に覆い被さる俺の手がどんどん下に迫ってくる。

俺はその手に翻弄され続けて、そして根をあげるんだ。
面白い程に、想像ができてつまらない…。
つまらないと思う反面、確実に俺はその手に踊らされてた。
あぁ、駄目だ、喉が渇く、こんなんじゃ足りない。
もっと激しくして欲しい。なのに俺の口は正反対のことを言う。
「…もッ…カ、カシィ…やぁッ…」
知ってるから、そういえばカカシは喜んで今より激しくしてくれる事を。
そう、もっと激しくいて、限界まで喉の渇きを忘れさせて欲しかった。

「…可愛い…」


可愛い?何処が?嬉しくねぇし、
っつかどうしたんだよ。いきなり…

「いいんだよ、お前は可愛くて」


なんで俺の考えたこと分かったんだ。
そんな目でカカシを仰ぎ見て焦って直ぐ顎の辺りに目をやった、カカシの口元はただ優しげに笑っているだけだった。

きっと、繋がったんだ。

気持ち?

心?

身体…



…多分、全部…

カカシは昔、そう遠い昔言っていた。
『俺たちはまるで鏡だね。似てるようで実は正反対で、お前は俺のxxxxxxxなんだ。
だから見ていて…』

あぁ記憶が曖昧だ。違う曖昧にされてるんだ。
こんな行為の最中にまともな思考なんてできるか。


でも、今ならこのまま消えてしまっても構わないと…

そう思えるくらい、俺はこのカカシの腕の中が好きなんだ。





今死ねたら



なんて幸せ…







「そんな事、考えないで…」


ほら、またカカシが俺の思考を読んでる。
読心術でも使ってるんじゃないだろうか。

でも、考えるって自然な事だろ…

そんな事を考えたら
あんたが今にも泣き出しそうな顔をするから、

俺は…

両の手を伸ばす
カカシにすがろうとしたのか…
慰めたかったのか…
目的を忘れられたその手を、
カカシは、手に取り触れてはならないモノに触れるかの様に口付ける。


掌、指、甲



優しく、慈しむ様に


びっくりした。
普段のカカシからは考えられない行動、誰かと間違えてるんじゃないかと思ったが
それでもよかった。
嘘でもカカシに優しくされて嬉しかった。

でも何故かあんたの哀しみが流れてきて
  少し、喉が潤った。
なんで哀しんでいるのか分からなくて、
気が付いたら、俺も泣いていた…
  

なんで泣いてんだ、貴重な水分が勿体ねぇ。て思ったけど
多分あんたは知ってるだろうから、別に気にしない事にした。

「…泣かないで、」

俺の涙をあんたが舌でそ、と舐めとってくれた。

俺の躯を抱きしめるあんたが、余りにも弱々しかったから
あんたが俺を抱きしめてるんじゃなくて
俺があんたを抱きしめてる、そう思えた。

「…大丈夫、だから」
あんたは俺の顔を両手で包み込んで優しい口付けをくれた。
また、喉の渇きが少し消えた。
カカシの触れているところから渇きが潤っていく気がして俺は全身でカカシに触れようと足を絡ませ、腕を背に回し顔をカカシの首筋に埋めた。
普段こんな事したら、簡単に振りほどかれて平手の一発でも喰らってそうなのに、今回はなかった。


何が大丈夫なんだ?とか、そんな事は気にしない。
俺が知らなくても、カカシが知ってるからそれでいい…
そう、思えるくらいに俺は何かに犯されてた。
きっと目の前の男に脳内を犯されてる。そういう術があるのかもしれない。


今は、この唇の感触だけが全てなんだ。



少し、冷たくて

少し、柔かい…


そして




優しい…



まるで、この男からは想像もできないくらいの…


でもこんなキスも嫌いじゃない




最後には、やっぱりあんたの笑った顔が見えた…

なんだか今日は随分と笑うんだなって思った。
普段からは想像できない。
どんだけ機嫌が良いんだろう。
聞いてみたかったけど、やっぱり聞けなくて フっと自嘲気味に笑ってみたら
カカシは何も言わずにまた優しいキスをくれた。

ずっと一緒にいて…



そう言いたくなった。
ずっと言いたくて、でもそんな事口が裂けても言えなくて
でも今なら許されるような気がした。
カカシが「いいよ、ずっと一緒にいよう」っていってくれる気がした。
そう、開きかけた口が言葉を発する前に、それが許されないことだ、叶ったらいけない事だってなんとなく感じたから、不自然な深呼吸という形で俺の勇気は消えていった。


俺にも分からない事がたくさんある…。

でも多分あんたはその理由を知ってるだろうから、だから俺はそのままあんたの体を抱き締めた。

抱き締めた腕から俺の気持ちが伝われば良いと思った。

伝わらなければ良いとも思った。


腕の中であんたの体が少し震えた。
「寒いのか」と聞くと何も言わず、あんたはただ俺の体を強く抱き締め返してきた。



なんだか母親にすがる子供みたいで、

今日のあんたは本当におかしい…


「どうした…?」


聞いても何も返ってこない…
耳に僅かに響く嗚咽は俺が愛してやまない、目の前の男から奏でられていた。



「突っ込んだまま泣くなよ」


悪態をつきながらも頭を撫で慰めてはみるが
俺の声が聞こえてはいないかのようにあんたは泣き続けて、必死に声を殺していた。


「…ッスケ……」



僅かに聞きとれた言葉…「サスケ」

確かにそう、俺の名を呼んだ


「…なんだよ」

聞いてはみるが何も返ってこない。


「おい、なんだよ!?」

少し強めに再び聞いてみるとあんたは本当に子供みたいに


「…どこにも…いかないで…!」


「…!?」


「…ずっと、一緒に…傍にいてよ…」


ずっと俺が言いたかった言葉。
堪えて、溜め込んで、心が壊れてしまうんじゃないかって思うくらいに俺の中に溢れてた言葉だった。

嬉しい、でも弱々しいカカシはらしくない

俺はため息を一つ溢して、湧き上がる感情を必死に抑えて「当たり前だろ」とカカシを抱き締める腕に力を込めた。
声も震えてたかもしれない。
俺自身も泣いてたかもしれない。
だが、それに反して俺の渇きは酷くなった。


「どうして…?」

「ど、どうしてってあんたが…はぁ?」



会話が噛み合わない、俺の言葉を聞いてないのだろうか…?
一世一代の勇気を振り絞り返事をしたのにカカシに俺の言葉は届いてなかったのか、緊張しすぎて声が小さすぎたのだろうか、
あらゆる事を考えみたが、腐っても上忍聞き逃すなんてありえないだろう。

おかしい…どう考えても、今日の男はおかしい…


「約束したのに…」


「おい!カカシ!!なんなんッ…」


声を荒げると、カカシはいきなり俺の唇をふさいだ。
荒々しい口付けはまるで今のあんたを表しているかのようで




苦しかった…



角度を変えてあんたの舌でが侵入してきた。
その下に水分を持っていかれてるのか渇きがまた酷くなる。
それでもそれを堪えて俺が答えようとすると、カカシは逃げるように唇をはなした。




名残惜しげに、カカシの舌を追おとしたら

オカシナ違和感に気が付いた…。



「…カ、カカシ…ッ」
喉が渇きすぎて声が禄にでない

カカシの身体が離れてていく…


カカシの顏が歪んでいく…



俺の躯は…



あぁ…なんだそういう事か

と納得せざるを得ない。



俺の指が

崩れていく。

肉はドロドロと粘土のように骨から離れ


カカシを追いかけられない…




「…カ、シッ…!!」





「…サスケ」


カカシの声だけが悲しく響いた。
粘土のような肉が離れた骨は砂のようにサラサラとベッドの上に積もっていく。

不思議と痛みは感じない。


「…なって…カ…シ……カ」



そりゃそうだ、俺は多分死んでた。
これは造られた身体だ。痛みなど感じるはずがない。



「ごめんね…」



…カカシ…



「…もう、限界なんたッ…」



カカシ…?


俺のことそんなに嫌いだったのか?
こんな事するほどまでに俺あんたに嫌われたのかよ…






「…ッ俺の…力不足で…もう…お前の姿を保つこともできない…」





はは、何言ってんだよ、カカシ…

聞こえねぇよ。

崩れてく自分の身体が見える。俺にはもう手足がない。



達磨と一緒だ。


こんな様みて笑ってんだろ。


いい様だって腹抱えて笑ってんだろ。
俺も笑い返してやりてぇけど、


もう…目も見えやしない。




「サスケ」




   あぁだめだ、
            しこうまでもうすれてく。

たしかに                                おかされてたんだな、


                 おれのしこう  、

   いや…
                             のう…     かな


 


        あんたがつくったんだもんな



あんたが…




なら、…さいごに   
 


                      つたわるかな





       カカシ




             おれ   、  

                                               やっぱ




  


       こんなんされても                               あんたを









                       『愛してる』






はは、さいごに         つごういい



        、       か





でも  
 



              あんたにあえて 








       し




                           あ








          わ 








                    せ














男は崩れていく少年の唇に涙を流しながらキスをした。




















水の落ちる音がする



此処はどこだ…?



此処は暗くて寒い。




最後に見たあの人は誰だろう。



分からない…


でもとても悲しそうに泣いていてた


慰めてあげたくなった。



もう一度、 会いたいと 思った。











…ポチャン…